34 それぞれの悲しみ

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34 それぞれの悲しみ

 魔王討伐隊の八人は、刺客に警戒し聖王アトレウスの古都を目指す。  カリマは、セオドアの壮絶な過去を知らされた。他の戦士達も同じように、悲しい想いを胸に抱き、この道を進んでいるのだ。  次の野宿では、セオドアと魔法使いの少年ジュゼッペが番をし、残りは火を囲み、カリマが仕留めた猪を食することとなった。 「カッリマちゃんのお陰で、今夜はご馳走よ!」  ホアキンが少女の赤毛をクシャクシャとかき混ぜる。 「へへ、あたし、これぐらいしか役立てないから」  今日も刺客に襲われたが、六人の男戦士が難なく敵を撃退し、カリマは戦いにあまり貢献できなかった。 「なーに言ってんのよ! 食べるって一番大切なの。いくら強くても食べなきゃ戦えないもの」  フランツ老人が同調する。 「お嬢ちゃんのお陰で旅の楽しみが増えた。毎日乾パンでは、やりきれんからのう」  大男のセルゲイは「うまい、うまい」と肉にしゃぶりつく。  槍のニコスはこの話に乗らず、となりのエリオンに尋ねた。 「師匠、セオドアがカリマ殿に話したことを、我らも告げたほうがよろしいでしょうか? 師の心を一つにとの教え、もっともと存じます」  エリオンは優しく微笑む。 「カリマ殿。面白くない話だが、聞いてもらえるか」  少女は唾を飲み込み、ニコスの眼を見つめた。
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