34 それぞれの悲しみ

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 お調子者のホアキンは、鉱石を扱う豪商の息子だった。  彼は酒場に出入りし女たちと遊び惚けていた。商売を覚えろと両親に叱られるが、のらりくらりと逃げ回っていた。  しかし、統一王ネクロザールの役人はホアキンの父に、鉱石をただ同然の価格で買い叩こうと圧力をかけた。 「あたしさあ、その時は知らなかったけど、親父は冗談じゃない! って断ったらしいんだ」  彼の父が役人の要請を拒んだのは価格だけではなかった。富豪の扱う鉱石が、王軍が周辺諸国を攻める武器に変わると、知っていたからだ。 「そしたらさあ、統一王の命令に逆らったと親父殿は処刑され全財産没収。お袋も後を追って逝っちゃったってわけ」  両親に先立たれた元富豪の息子は、酒場の周りをうろつく乞食となった。 「なっさけないよねー。親父殿がそんなに大変だったなんて、ぜーんぜんあたし、知らなかったの」  カリマはただただ首を横に振るばかり。 「そんなあたしにエリオン様は、優しくしてくれた。あたしが苦しいのは、ネクロザールの圧政が元だって。あれが聖王の生まれ変わりと嘘つくからだって、教えてくれたんだ」  調子のいい男は、辛い思いを胸に秘めていたのか。 「ホアキン! 全然自業自得じゃないって!」 「ありがとうカリマちゃん。あたしね、あなたが仲間になってくれて、こんな嬉しいことないんだよ」  細身の短剣使いが少女の赤毛をそっとなぜる。  フランツとセルゲイも頷いた。
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