6 幸せな村

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「よお、カリマか。また狩りに出かけるのか?」 「うん。ウサギを獲って、姉ちゃんにあげるんだ」  マルセルは声を潜めた。 「いいのか? 勝手に森で狩りをして、ネクロザール王の役人に見つかったらまずいぞ」 「あたしはそんなヘマしないさ。姉ちゃんに丈夫な赤ちゃんを産んでほしくてさ……今年は不作だろ? 姉ちゃん、村長夫人が贅沢するわけにいかないって、ロクに食べてないんだ」 「お前、いいやつだな」  鍛冶屋は女狩人の頭を撫でる。しかしカリマは幼馴染の手を振り払い、顔を上げた。 「……マルセル、ずっとその帽子……姉ちゃんが編んだ帽子、被ってるんだ」  若者は慌てて帽子をこすった。 「あ、まあな。俺のボサボサ頭を隠すのに、ちょうどいい」 「……まだ姉ちゃんのこと……いいや、行ってくる」 「役人に見つからないようにな」  少女カリマは振り返ることなく、左腕を挙げた。  ラテーヌ地方の辺境ラサの村。  村人それぞれの心模様もふくめて、ささやかではあるが幸せのうちにあった。  だがこの幸せは、一瞬にして打ち砕かれた。  ネクロザールが派遣した役人によって。
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