7 暗転

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7 暗転

 マルセルは、自作の鍬をリュシアンに届け、狩りに出掛けるカリマを見送った。用は済んだとばかりに、彼は館をあとにする。  そのとき。  遠くの大地がザザザと鳴った。  音は次第に近づき、金属音と人々の騒めきが加わった。  鉄の鎧を着けた男たちが近づいてきた。幾人かの村人が、それらを遠巻きに見つめている。  鎧の男は百人ぐらいだろうか。マルセルも慌てて館の蔵に入り様子を伺う。  鎧の群れは、館に入り口に立ち止まる。  軍団の先頭に白いマントを羽織った男が進み出て、声を張り上げた。 「村長はいるか!」  すぐさま、マルセルが先ほど会ったばかりのリュシアンとシャルロットが現れた。五人ほどの使用人を伴って。  白いマントの男は、リュシアンの胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。 「村長リュシアン。お前は、陛下が定められた量の小麦とワインを納めず、私腹を肥やした。法の裁きで処刑する!」 「待ってくれ! 日照りが続いて不作なんだ! 来年に不足の分を埋め合わせるから、今年はどうか見逃してくれ!」 「見苦しい言い訳はするな!」  マントの男はリュシアンを突飛ばし、隣の兵士に合図する。  指示を受けた兵士は槍を構え、転がるリュシアンに襲いかかった。 「だめえええ!!」  身重のシャルロットが、地に伏せたリュシアンに覆い被さる。  槍の贄となったのは、村長の妻だった。
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