7 暗転

3/5
前へ
/36ページ
次へ
 と、よく知る娘と見知らぬ男たちが言い争う声が聞こえてきた。  慎重に若者は声のする方に近づく。 「やめろ! あたしに触ったら、あんたらの目玉、うち抜いてやる!」 「陛下の許しがない森での狩猟は法に背く。捕まえろ」 「こいつは女だ。奴隷として、陛下に差し出そう」 「いやだ! あたしはラサに残る! 姉ちゃんの赤ちゃん、守るんだ!」  木陰でマルセルは震えながら見つめる。このままでは、カリマは連れ去られてしまう。  男たちは、皮の胸当て着け剣を下げている。館の惨劇を思い起こす。呆気なく殺されたシャルロットにリュシアン……。  脚がガクガク震えてくる……このまま隠れていれば自分は助かる……カリマは運が悪かった……仕方ない……いや違う! 「待ってくださーい! そいつを奴隷なんて、もったいないっすよ」  マルセルは、頬を引き攣らせて、諍いの場に近づいた。しゃくしゃくと落ち葉を踏み鳴らす。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加