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と、よく知る娘と見知らぬ男たちが言い争う声が聞こえてきた。
慎重に若者は声のする方に近づく。
「やめろ! あたしに触ったら、あんたらの目玉、うち抜いてやる!」
「陛下の許しがない森での狩猟は法に背く。捕まえろ」
「こいつは女だ。奴隷として、陛下に差し出そう」
「いやだ! あたしはラサに残る! 姉ちゃんの赤ちゃん、守るんだ!」
木陰でマルセルは震えながら見つめる。このままでは、カリマは連れ去られてしまう。
男たちは、皮の胸当て着け剣を下げている。館の惨劇を思い起こす。呆気なく殺されたシャルロットにリュシアン……。
脚がガクガク震えてくる……このまま隠れていれば自分は助かる……カリマは運が悪かった……仕方ない……いや違う!
「待ってくださーい! そいつを奴隷なんて、もったいないっすよ」
マルセルは、頬を引き攣らせて、諍いの場に近づいた。しゃくしゃくと落ち葉を踏み鳴らす。
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