§1.人たらしと元ホスト

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「とりあえず、その肝だめしイベントだけど……葉月が実際に参加して、どんなものか体験してきて?」  私が他社のイベントに参加だなんて、社長がまたとんでもない無茶振りをしてきた。  仕事の一環だと言われれば仕方ないのだけれど。 「わ、私が実際に……行くんですか?」 「そう! ほら、潜入捜査的な?」  目を丸くしながら社長に視線を向けると、彼女は至極楽しそうな顔をしていた。  ……潜入捜査、って。なにか刑事ドラマにでも影響されたのだろうか。 「それは危険だろ。葉月さんはかわいいから絶対男が寄ってくるって」  架くんが社長にそう提案した。私にお世辞を言ったところでなにも得などないのに、本当によくわからない人だ。  だけど私の潜入捜査を止めてくれるのならばありがたい。 「別にいいじゃないの。葉月に良縁が見つかるなら」 「ダメ。潜入捜査にならない!」  架くんは意外と仕事熱心というか真面目なのだな……などと思った次の瞬間、それを頭の中で全撤回した。 「だったら葉月さんと一緒に俺も行く」  自分も行くだなんて、どうしてそういう思考になるのかわからない。 「架はダメよ。アンタ目立つから。それこそ女の子たちが寄ってきて、潜入捜査できないじゃないの!」
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