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社長のその指摘には、私もウンウンと大きく首を振ってうなずいた。
まさにその通りだ。架くんの容姿なら、男性一番人気間違いなしだろう。
偵察に行くのに目立ってしまっては元も子もない。
「大丈夫。俺、めちゃくちゃダサい格好して行くから。職業はフリーターの設定で、ずっと葉月さんと一緒にいれば誰も近寄ってこないよ」
妙案を思いついたとばかりに、架くんが社長に人差し指を立てて自信満々に言う。
たしかに仲良くなったカップルを装うのならば、ふたりで話していてもおかしくはないし、イベントの内容や段取りもしっかりと調査できる。
だけど、私はご免だ。そのイベントには行きたくない。
「わかった。じゃあ、ふたりで行ってきなさい。顔は向こうにバレていないはずだから大丈夫でしょ」
断りの文言を口にする寸前に社長から許可が下りてしまい、私はさすがに慌てふためいた。
「しゃ、社長! 私は遠慮します! すみません」
「なんで?」
社長は急に大声を出した私に、不思議そうな視線を送る。
「そのぅ……私は幽霊とか、そういうものが苦手なんです」
私はとくに霊感体質なわけではないが、完全に“幽霊”を信じている。それについてなにをどう説かれようと、怖いものは怖いのだ。
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