§1.人たらしと元ホスト

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 社長のその指摘には、私もウンウンと大きく首を振ってうなずいた。  まさにその通りだ。架くんの容姿なら、男性一番人気間違いなしだろう。  偵察に行くのに目立ってしまっては元も子もない。 「大丈夫。俺、めちゃくちゃダサい格好して行くから。職業はフリーターの設定で、ずっと葉月さんと一緒にいれば誰も近寄ってこないよ」  妙案を思いついたとばかりに、架くんが社長に人差し指を立てて自信満々に言う。  たしかに仲良くなったカップルを装うのならば、ふたりで話していてもおかしくはないし、イベントの内容や段取りもしっかりと調査できる。  だけど、私はご免だ。そのイベントには行きたくない。 「わかった。じゃあ、ふたりで行ってきなさい。顔は向こうにバレていないはずだから大丈夫でしょ」  断りの文言を口にする寸前に社長から許可が下りてしまい、私はさすがに慌てふためいた。 「しゃ、社長! 私は遠慮します! すみません」 「なんで?」  社長は急に大声を出した私に、不思議そうな視線を送る。 「そのぅ……私は幽霊とか、そういうものが苦手なんです」  私はとくに霊感体質なわけではないが、完全に“幽霊”を信じている。それについてなにをどう説かれようと、怖いものは怖いのだ。
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