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ある意味働きやすく、居心地も悪くなかったのだけれど……
――― 人生、このままでいいんだろうか。
突然ふと、そんな考えが浮かんでしまった。
自分自身は恋愛とは無縁だが、人の幸せを見聞きするのは嫌いではない。むしろ好きだ。
数少ない女子の同僚の楽しげな恋バナを耳にすると、まるで自分が恋愛しているかのような錯覚に陥って、素直に心から祝福していた。
自分の話ではなくとも、それだけで満足だった。
そんなときに偶然知り合ったのが、杜村社長だ。
彼女と私は、同じカルチャースクールに通い、カラーセラピーの講座を通じて出会った。
カラーセラピーは、私は単なる興味の範ちゅうだったけれど、社長は仕事に役立てたいと思って学んでいたらしい。
私たちは仲良くなるにつれ、どんどん会話が弾んで一緒に飲みに行くようにもなった。
そしてこの会社、スターシェードで働かないかと声をかけてもらったのだ。
社長は私と十歳以上年齢が離れているというのに、なぜか話も感覚も合う。
本当は地味で面白みがないくせに、それを取り繕ろうかのように表面上は愛想よく振る舞う私と、自由奔放で心底明るく、お喋りな彼女とでは、その性格は正反対。
どうしてウマが合うのかわからないけれど、結局のところ私は彼女に憧れを抱いたのだと思う。
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