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生き方を含め、こんなふうになれたら素敵だなと、私に無いものを持っている彼女をすごいと思ったし尊敬できた。
彼女のようになれるわけがないのは、わかっている。
地味な私が、いくら彼女の真似をして背伸びをしても無理だ。周りは引くだけだろう。
だけど彼女と一緒に働きたいと思った。
カップルの運命の出会いに立ち会う仕事を一緒にやりたい、と。
そんな理由で、特に思い入れがなかった前の会社を辞めて、この小さな会社に転職した。
……杜村 凪子。
豊臣秀吉も真っ青なくらいの、人タラシだ。
「葉月、もう少し服の色を明るめにしなさいよ」
社長は腕組みをし、椅子に座る私の服装チェックを始めた。
今日の私の服装は、白のシャツに薄いグレーのタイトスカートと、ヒールが低めの黒パンプスだ。
たしかに地味ではあるけれど、それはいつものことなのに。
「社長がスカートで来いって言うから、それを守ってるのに……。今度は色ですか?」
あっけらかんと軽い調子で返事をしたが、社長の顔色は変わらない。
スタッフが全部で十五人ほどしかいないうちの会社には、制服というものがない。
それならばスーツが妥当だろうと勝手に判断して、以前はパンツスーツばかり着て来ていた。
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