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黒や紺など、微妙にバリエーションを変えてはいるけれど、必然的にいつも似たような服装になってしまう。
社長はそこに目をつけて『葉月、明日からパンツは禁止ね』といきなり改善命令が出たのだ。
「明るいピンクのフレアスカートがいいんじゃない? かわいいわよ。葉月に絶対似合う!」
「無理です」
それが似合うのは、見た目がかわいい女子だけなのはよく知っている。
「それにさ、もっとこう……ヒール高めの靴にしよう!」
「そんなの履いたら歩きにくいし、派手にコケるのが関の山です」
この年になってまで街中で転び、膝を強打して血だらけになりたくない。履きやすい靴が一番だ。
「コケないように歩く練習をすればいいじゃないの」
「練習って……」
「良い男をゲットするためよ!」
ウフフ、なんて艶っぽい唇で言われたら、女の私でもドキドキしてきそうだ。やはり社長は色気があって美しい。
「良い男って、なんの話? もしかして俺のこと?」
気がつくと社長の後ろに人影があり、私たちの会話にすんなりと合流した。
滝沢架、二十七歳。
半年くらい前に社長が突然社員にした男性だ。
コネ入社なのは私も同じだけれど、うちの社長は急に人を雇い入れるのが好きみたい。
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