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社長が突っかかったところで、架くんの顔がようやく離れていく。
もう、やめて欲しい。男性への免疫がない私は、たったこれだけのことでかなり動揺してしまうのだから。
「まさか。凪子さんも素で十分綺麗だよ」
女性を褒めることに関しては、架くんには天性の才能がある。
どこまで本気で言っているのかわからないけれど、お世辞も含め、女性をよろこばせるのが非常に上手だ。
「でもさ、葉月はもっとマスカラとかしてみたらどうかな? 目元がパチッとなってお人形さんみたいになるわよ?」
「なりませんよ。私、ブサイクですから」
私の顔はアイラインを引いても地味なままなのはわかっている。
だが、マスカラやマツエクなどを施したところで、どこまで変わるのかと冷めている自分がいるのだ。
「葉月さんのどこがブサイクなの?」
架くんが再び私の顔を覗き込む。その整った顔は、私にとってすでに凶器だ。私は固まってしまって身動きができなくなった。
「自己評価低いなぁ。かわいいのに」
架くんのそんな何気ない行動に、私の顔の温度が面白いくらいにまた上昇していく。
彼は本気で言っていないとわかってるのに、私はバカだ。なぜいちいち反応してしまうのだろう。
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