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「架、顔が近いって。葉月が困ってるでしょ」
社長に注意され、架くんの綺麗な顔が目の前で破顔した。
「あはは。葉月さん固まってる」
「アンタのその昔のクセ、やめなさいよ」
チクリと社長に嫌味を言われ、彼はようやく私から顔を離した。
社長の言うとおり、女性との距離が近いのは、彼の昔のクセなのだろう。
女性がよろこぶ言葉を多用するのもそうなのかもしれない。
彼はここに来る前、ホストをしていたそうだ。
世の女性をお酒と共によろこばせ、癒す職業。
それについては、職業差別をする気は一切ない。
私の知らない世界だけれど、仕事なのだからいろいろと難しいこともあるはずだ。
ホストでも稼げる人と稼げない人がいるという噂だし。
お店以外の場所でも営業活動をしたり、よく知らないけど大変そう。
どこの店で働いていたとか、詳しいことは聞いていないけれど、架くんはその店のナンバーワンだったらしい。
……まぁ、あの容姿なら十分にありえる。
「架、アンタも来週の花火イベントの準備、ぬかりなくね」
「うん。それは葉月さんが居るから大丈夫。心配なのは天気だよね。雨降らなきゃいいけど」
来週うちが予定している花火イベントとは、ビルの屋上で飲食を楽しみ、そのあと夏らしく花火をしようという企画だ。
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