§1.人たらしと元ホスト

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§1.人たらしと元ホスト

 男性はいったい、女性のどこを見て惹かれるのだろう。  守ってあげたくなるようなタイプが、世間ではモテるのだろうと想像はつく。  かわいらしく着飾った見た目?  甘ったるく鼻から抜ける声?  猫のようなやわらかい仕草?  考えたところでわからない。  だけど私には無理だと思う。どうがんばってもかわいくなれないもの。  それに、積極的に恋愛がしたい欲が湧いてこない。  こういうのを『枯れている』と言うのだろうか。 「葉月(はづき)、来週の花火イベント、大丈夫よね?」  パソコンのモニターにかじりつき、カタカタとキーボードを叩く私の後ろにいつの間にか人影ができた。  首だけで振り向くと、社長が私の肩に手を置いて一緒にモニターを覗き込んでいる。  綺麗なストーンがいくつもあしらわれたネイルと共に、上品でフローラルな香水の香りが鼻腔をくすぐった。  ふんわりと巻かれたツヤツヤの髪が自慢で、シミやくすみなんてひとつもなく、透明感のある肌の持ち主なのが、我が社の杜村(もりむら)凪子(なぎこ)社長だ。  彼女から発せられるフェロモンは、四十代半ばだとは思えない。 「男女とも人数も集まってますし、準備もバッチリです」 「さすが葉月! ぬかりなしね」  ぬかりがないのは、ある意味社長の見た目だと思う。
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