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『おかえり』
それから私たちは陽夏の手を取って家に帰った。道中で話を聞いたものの、まだ幼い陽夏の拙い言葉ではこの現象が何なのかは分からないままだった。ただ分かっているのは『お盆の間だけ』という陽夏の言葉。それが本当ならわずか数日でまた陽夏を手放さなければならないというのか。会えて嬉しいのは確かなのに、何て残酷なのだろう。この温もりが離れるあの辛さをまた味わわなければならないのか。夫の手が車のハンドルを強く握るのを見て、彼も同じことを考えているのだと思い、私もまた眠ってしまった陽夏の手を握った。
「ただいま」
家に着いて玄関の扉を通ると、陽夏はそう言った。
「おかえり、陽夏」
何て幸せな言葉だろう。ついさっき、別れが残酷だと思ったことも忘れてしまう。毎日当たり前のように聞いていた『ただいま』に、またも涙が溢れてくる。あの日、いつものように学校へ行く陽夏を見送ってから、私はずっとこの『ただいま』を聞きたかったのだと分かった。
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