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 悩んだ末、リョウコの両親と話し合い、人本化する前に一年間猶予を設けることにした。  ご両親はすぐに人本化する、と決断したことを後悔しているようだった。  もし少しでも目覚める可能性があるのなら……。その思いが一致して、カスミはとても嬉しく思った。  一年間の理由は、金銭面の問題――生命維持という高度な医療技術が必要なため、かなりの金額が必要だったからだ。平社員のカスミと、中小企業管理職のご両親が出せる金額は一年分が限界だったのだ。  しかしカスミはそれを理由にリョウコを諦めることはできなかった。  金銭面が問題だとしたら、今以上に働いて、一年以上持たせたいと考えていたのだ。  カスミは、死に物狂いで働いた。どんな仕事にも文句を言わず、リョウコの医療費を稼いだ。  それでも足りないと気づいた彼女は、リョウコのご両親に内緒でクラウドファンディングを立ち上げた。  絶対にリョウコを諦めない。その思いが激務に打ち込むカスミを支えていた。  その結果、リョウコの医療費は一年分以上集まったのだった。 * * *  その日も、カスミは夜遅くまで働いていた。  働きすぎだから、今日は早めに帰るよう上司にくぎを刺されていたが、カスミはそれを無視した。 ――今日働いた分で、リョウコが一日生きられる。  その思いを胸に毎日激務をこなすカスミ。  しかし無理がたたって、彼女はある過ちを犯すことになる。
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