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 目を覚ますと、周りは火の海だった。床に置いていたいくつかの古書や、ベッド、机が燃えていた。 「た、たいへん!!」  カスミはようやく正気を取り戻した。せき込みながら目をこする。 そこでカスミはさらに信じられないものを目にしたのだった。 「人本が……」  あの本箱が、燃えていたのだ。 「そんな、父さん! 母さん!」  彼女は金切り声を上げた。 「いや、そんな。嘘よ!」  手を伸ばして中の人本を出そうと試みるが、火の勢いがすさまじく、それは叶わなかった。  とうとう火の手が階段に及んでしまったので、カスミは窓から飛び降りることにした。  窓を開けると、ひゅるりと風が吹き込んでくる。 「あっつ!」  その風が、火の勢いを強めた。 「早く逃げなきゃ!!」  近所の人が消防車を呼んだのか、家の周りはいつのまにか数台の消防車で囲まれていた。  カスミは窓から下を覗いた。  すぐ下に、生垣がある。そこに向かって飛び降りれば、命にかかわるようなことはないはずだ。
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