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覚悟を決めて飛び降りようとしたその時だった――。
「きゃはははっ」
背後から子どもの声が聞こえた。
振り返ると、炎々と燃える中に、幼いカスミとその両親が楽しそうに散歩している光景が見えた。
「あ、おじいちゃんとおばあちゃんだ! 今いくよぉ」
小さなカスミはぴょこぴょことスキップをしている。
この光景は――。
「母さんの人本にあった、あの場面だ」
カスミは飛び降りるのをやめた。
散歩の次は、家族でキャンプに行った場面が火の中に浮かび上がった。父さんがテントを組み立てる横で、私と母さんはテーブルや椅子を組み立てていた。
すぐに画面が切り替わる。
次は家族旅行に行った時の光景だった。その次は海水浴。山登り……。
家族の思い出――母さんの人本に書いてあった思い出が、真っ赤に燃え盛る火の中に浮かび上がっては消えていく。
「思い出が、燃えているんだ」
カスミはそこから動けなくなり、ついには炎に囲まれてしまった。
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