5人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
気が付くと、カスミは病院のベッドの上にいた。それから諸々の検査を済ませ、家に帰れたのは数日後だった。
火傷の痕をかばいながら、やっとの思いで家に付くと、家は全焼していた。
真っ黒な家の骨組みが丸出しになっていて、周りにある建物を見ないと、そこがカスミの家だということが判断できなかった。
「全部、燃えたのね……」
カスミはその場で立ち尽くした。
火の不始末で人本を燃やしてしまったとなれば、『古書収集家』の資格の剥奪は時間の問題だった。
これからは、もう本の中でも家族に会えないのだ。そのことがカスミの心に暗い影を落とした。
――最後に見た母は、私の幻覚だったのだろうか。
そう思ったとき、カスミの唯一の持ち物であるスマホが鳴った。
「――リョウコが!?」
カスミはボロボロの身体を引きずって、総合病院まで走った。
最初のコメントを投稿しよう!