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五
「――リョウコ!!」
カスミは彼女の病室に飛び込んだ。
何と、リョウコが奇跡的に目を覚ましたのだ!!
「……心配かけてごめんね。カスミ」
二人はお互い泣きながら、抱き合った。
「もう、三年経ったんだね」
「うん……。リョウコ、びっくりしたでしょ」
「そりゃそうよ。起きたらアラサーなんですもの」
「ちょっと、リョウコったら……」
そして、リョウコは少し顔をしかめると、カスミの周りをクンクンと嗅ぎ出した。
「ねぇ、カスミ。何か、焦げ臭くない?」
カスミはギクッとした。
家が全焼したから、リョウコの持ち物も全て無くなってしまったのだ。
「ごめん、リョウコ。実はね、家、燃えちゃったの」
「……え?」
「全部燃えたの」
「……いつ?」
「三日前」
「……アラサーになったことより、びっくり」
リョウコは目をまんまるくし、少し唸ってこう言った。
「まぁ、カスミが無事で良かったよ」
「……本当にごめんね」
「ねぇ、カスミ?」
「なぁに?」
「……もし私が今回みたく目覚めなくなったら、今度は迷わず人本にして」
「――人本はだめ!!」
カスミは病院中に響き渡るくらい大きな声で叫んだ。
「人本はダメだよ……。だって、燃えたら何も残らないもの……。人本になっちゃダメ!!」
「カスミ、もしかして……」
「うん。四冊全部、燃えちゃったの」
「そうか……。おいでカスミ」
リョウコは両腕を大きく広げた。
そしてカスミはその胸に飛び込んで、堪えていた悲しみを吐き出すように、泣いた。
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