ある古書収集家の述懐

五

　カスミは、人本サポートセンターを解雇された。古書収集家の資格をはく奪されたからだ。
　その後カスミは火事で負った傷を治療しながら、リョウコの働くレストランでアルバイトをしている。
　収入は一気に減ったが、それでもリョウコが目を覚ましてくれて幸せだった。
　家が無くなってしまったので、シェアハウスは解消になり、二人別々の家に暮らしている。

　最近、リョウコは職場に気になる人ができて、三年間眠っていたのがウソみたいに元気になった。彼女曰く、遅れた分は取り返さないと！　ということらしい。

　一方でカスミは、新しい本棚を買って、再び本を集め始めた。リョウコと二人で楽しめる、新しい本を。
　この世界の誰かが書いた、素敵な物語を読むために。