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 ザァザァと、重たい雨が降っている。  渡辺(わたなべ)カスミは、ある依頼者の対応をしていた。その依頼者――おばあさんは、目に涙を浮かべ、本を受け取った。 「――これが、あの人かい?」 「はい。そうです」  おばあさんは、一瞬言葉を失った。  それから、愛おしそうに本の表紙を撫でる彼女に、カスミはどう声を掛けたらいいか分からなかった。 「……これで、ずっと一緒にいられるね。私が子供のころから集めた本のように」  おばあさんの顔に、いつのまにか笑顔が戻っていた。 「さぁ、家に帰りましょうかね」 「……人本(ひとほん)サービスをご利用いただき、ありがとうございました」  カスミは頭を下げる。  おばあさんもぺこりと頭を下げ、近くのバス停へと歩いて行った――。
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