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――『人本サービス』とは何か?
カスミの暮らすニホンでは、おおよそ百年前に、あるカリスマ科学者によって「生きている人を本にする技術」が生み出された。
そのカリスマ科学者は、たいそう口下手で、文章を書くことが非常に苦手だった。
自伝を書くなどもってのほかだったが、自分の存在を後世に伝えることを考えたとき、過去の偉人たちのように本で残りたい、と強く願った。
そして、その科学の申し子は、驚いたことに人を本にする技術を生み出し――自らその第一号となったのだ。
彼は本になる前、その技術のことを「人間を後世に残す一つの形である」と説き、人が本になることを「人本化」と呼んだ。
それから百年後、彼の本は、国立国会図書館の特別ルームで閲覧することができる。
彼が人本化したあと、国はその技術を彼の親族から買い取った。
そして新たな制度として、「人本化制度」を設立するという案が出された。
ニホンに暮らす一般の人々を、後世へ伝える方法として普及させるというのが狙いだった。
人本には、誕生から人本になるまでどのように生きたか事細かに記録されている。
自分が生きた証を後世に残すことができると考えた国民は、人本化制度に賛成した。
そして、ついにその設立が実現したのだ。
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