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二
報告書を書き終えると午後の七時で、事務所の外は真っ暗だった。
カスミは家に帰り、玄関の靴を見た。シェアハウスしている友だちが、まだ帰って来ていない。
「今日も残業かな……?」
リビングで軽い夕食を済ませると、階段を上り二階の自室へ向かった。
カスミの部屋は、本でいっぱいだった。壁一面がアンティーク調の本棚になっていて、彼女がいままで収集した古書がずらりと並んでいる。
カスミは部屋の中央に置いてある鍵付きの本箱に近寄り、ある本を――母の人本を取り出し、椅子に座って読み始めた。
「おかえり」を聞けない代わりに、人本を読む。母がまるで目の前にいるようだ、とカスミは錯覚した。
本箱には、彼女の祖父母、両親の人本が合わせて四冊保管されている。これらは、カスミが初めて集めた本だった。
夢中になって読んでいたカスミは、部屋に入ってきた人物に気がつかなかった。
「まーた、そんな本読んで! 読みすぎは身体に毒だよ?」
「……おかえり、リョウコ」
カスミの同居人、リョウコが家に帰ってきた。
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