さよならモビリティ

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 まだだ…!まだまだ、こんなものじゃない…!  オレのスピードはもっともっと速く速くハヤクハヤクなるはずだから。  この体には銀河系随一のエンジンが組まれている。  流星が消えるように、彗星がどこまでも光の帯を伸ばすように、キラキラと音を立てて走り抜けたい。  そのためにオレは作られたのだから。  流線型のフォルムにブルーの稲妻のライン。  これがオレのボディ。  時速は500キロを超えてまだまだ上がっていく。  瓦礫の間を縫い、草原を抜け、砂漠を超えて走り続ける。  やがて、海を越えるかといったところで、スピードは地上を離れ、空へと向かう。  あとはひたすら高みを目指すのみ。  今の自分を越えるのは古傷を舐めるように簡単なことだ。  恐れを知らなければいいだけのことだ。  オレには限界なんてない。  躯体が揺れながら上昇する間、流線型と空気の層の隙間にピリピリと押し寄せる回転を感じる。  真空を生み出す切れ目の無い粒子の吸着が始まる。  いい度胸をしている。  オレは空気さえも味方に付けて走りを磨耗する。
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