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「……そっか。そうだよね」
「オカネはかせぎたい。もっとベンキョウもしたい。だから、ニホンにいたいキモチもある。でも、コキョウじゃない」
「帰る場所が無いって事?やっぱり日本にはいられない?」
「……」
カマルは黙り込んでしまった。
「ご、ごめん……」
「うんん、」
彼は困ったように笑った。
「ケントは、ボクのことすごくカンガエてくれてる。ミライのコトも。わかるよ」
「カマル……」
「ニホンにいたい、でも、」
「……」
泣きそうな彼の顔。
やはり、本当はインドに帰りたいのだろうか。
優秀な彼の事。きっと帰国しても働き口はごまんとあるだろう。
僕はきゅっと口を引き結んだ。すると彼はそっと手を伸ばし、親指で僕の唇に触れた。
「……ケント、いって、」
「何を?」
「ボクがかえってきたトキのコトバ」
「お帰り?」
カマルは泣きそうに笑った。
「タダイマ……ケントが、ボクのかえるバショになってくれる?」
コキョウのように、ボクをうけいれてくれる?
「カマル……」
みるみるうちに僕の目に涙が溜まる。
何度も、何度も頷いた。
「本当の故郷にはなれないけれど、僕が日本のカマルの帰る場所になる。だからカマル、帰ってきて、僕の所に……!」
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