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「っ、ふざけるな! だったら、おまえはどうなんだ!? 俺の退職日に家を出ていって、これみよがしに冷蔵庫も棚も空っぽにして! そっちこそ、俺のことなんかなにも考えていないじゃないか!」 「……当たり前でしょう? 自分を尊重してくれない相手のことを、どうして尊重しなければならないんですか」 「お、俺は、定年したらゆっくり、」 「ええ、ええ。何度も聞きました。人生を山に例えるとすれば、定年が頂上で、そのあとはゆっくりくだるんでしたよね。わたしに言わせれば、あなたが築いてきた山は吸殻のように不快な山でしかありません。だから、わたしもくだるんです。あなたと違う道を──」
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