6/11
前へ
/11ページ
次へ
 由里子が出ていって五日が過ぎた。もはや、部屋の有り様はひどいものである。仕方なく壮一はゴミ袋を片手に掃除をはじめることにした。どうせ、なにもやることはないのだ。ならば、片付けをするのも悪くないだろう。  シンクで項垂れていた花たちは、今となってはもう悪臭を放っている。茎の部分が腐り、ねっとりとした糸を引いていた。壮一は顔をしかめながらそれをゴミ袋に入れると、リビングへと向かった。  テーブルの上にはゴミの山。それらをゴミ袋へと入れると、幾分かスッキリとした気分になり、壮一は気を良くした。灰皿には吸殻がこんもりと山を作っている。吸殻を捨てたら買い物に行こう。料理くらい俺にだって出来る。ふと、そんなやる気が沸いてくる。  ガラスの灰皿を手に持ち、ゴミ袋へと傾ける。ところが吸殻は山の上のほうだけしかゴミ袋のなかへ落ちてこなかった。灰皿に水を入れていたせいで灰と吸殻がくっつき、いくら揺すっても落ちてこない。仕方なく手近にあったティッシュを数枚抜き取り、灰皿の底を拭うようにして吸殻を落とすも、固まってこびりついた灰までは落とせなかった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加