第2章

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 真っ暗な視界が広がっていた。前を見ても後ろを見ても私を囲むのは真っ暗な暗闇だった。前に進もうが道があるのか、続いているのかさえ判断が出来ないほどに暗かった。  少しして何かの音が聞こえることに気づく。耳をよく澄ませると、私の名前を呼ぶ声だとわかった。  そこから私の意識は覚醒したのか、視界が広く明るく鮮やかさを覚え鮮明に映る。私の目の前で焦ったような仕草を見せたのは冬香だった。 「よかった……」 「……どうしたの?」  冬香が安堵の笑みを浮かべたことに気づいたが、なぜ冬香が焦っていたのか、今安堵の笑みを浮かべたのか理解が追いつかずなぜなのか聞いてしまった。 「あまりに連絡がつかないから心配で宿に来たら鍵は空いてるし琉凪はうなされてるし……本当に何事かと思ったんだよ」  何か悪い夢でも見ていたのだろうか。そうだとしても、私が部屋の鍵を閉め忘れるなんてことはしないはずだ。昨日の夜だって鍵を閉めた記憶がちゃんとある。  そんなことを考えながら、ベッドから体を起こし、準備をするからと2人が外に出てくれる。
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