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第1章
「琉莉!」
暖かい日差しと優しく吹く風。そんな自然が感じられる場所に私の家はある。そして、緑に囲まれた大きな噴水。その傍に髪が肩まで伸び、茶色く輝きを放つ後ろ姿が見え私は大きな声で呼んだ。私の声に気づきゆっくりと振り返った琉莉は駆け寄る私に手を伸ばした。
「琉凪、そんなに走ってはだめよ」
「ごめんなさい」
そう返すと琉莉は優しく頭を撫で私の腕を引いて屋敷内へと入る。玄関の扉を琉莉が開けると冷たい視線を向けた母が立っていた。私は反射的に目を背ける。
「琉莉、何をしていたの?」
「ごめんなさい。少し外の風に当たりたかったの」
「今の時間を貴方は知って言っているのかしら。河瀬家の娘である限り家の名に泥を塗るような行為は慎みなさい」
「はい……」
母は、厳しい言葉を受け頷いた琉莉の腕を乱暴に掴んだ。琉莉にそれ以上の有無を言わせることなく、琉莉も抵抗することなく2階へと連れていかれる。玄関に1人取り残された私は琉莉の後ろ姿を見つめるだけで精一杯だった。
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