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3. 動物病院
幸いにも、ココがかかりつけの動物病院はすぐそばだった。
受付の人に事情を説明してから待合室の椅子に舞野と座り、箱の中をそっとのぞく。
なるべく揺らさないように連れてきたものの、異変は感じ取ったらしい。弱々しい声でにーにーと子猫は鳴いていた。
そういえば、この子を診てもらったとして、そのあとはどうしよう。
舞野は引き取れるんだろうか……なりゆきで拾ったぽかったし、猫を飼ったこともなさそうだ。
いきなり子猫を引き取るのは、ハードルが高いかもしれない。
「……舞野は、猫飼えるの?」
それでも一応聞いてみた。
箱の中を見て緩んでいた目元が、一瞬で厳しくなる。
うーん、やっぱりそこまで考えてなかったみたい。
私が引き取る方がまだ現実的かな。多頭飼いは初めてだけど……。
院内のポスターをぼんやりながめつつ、多頭飼いについてどう親を説得するか考えていたら、絞り出したような声が聞こえて舞野の方を向く。
「オレは」
両目をつぶってから、開く。
そして私の目をしっかりと見据えた。
「飼いたい、と思う。拾った以上は責任持ちたい」
「……お家の人は納得しそう?」
「母さんがダメって言う気がする……電話してきてもいい?」
「うん。この子見てるよ」
ありがとうというが早いか、舞野はスマホを片手に病院の外へ出て行った。
曇りガラス越しで表情は見えないし、声も聞こえない。
ちょっとでも前向きな答えだといいな。
子猫の声が聞こえなくなっているのに気づいて、あわてて箱の中を凝視した。
背中がわずかに上下している。眠ってしまっただけのようだ。
よかったぁと安心して、長い息を吐きながら天井を見つめた。
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