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結論からいうと、子猫はやはり弱っていた。
猫風邪をひいていて、鼻が詰まり目垢が増えていたのだ。
鼻詰まりのためか、子猫用のフードを見せても首をかしげている。
乳離れは終わってそうなのにな、と先生が指にフードをすくって子猫の鼻先に持っていくと、やっと舐めるように食べはじめた。
その場の緊張が少しほころんで、診察室の空気が明るくなる。
先生が丁寧に猫風邪とシラミに対するケアの仕方と、薬の与え方について説明をしてくれた。
全てが終わったのは、満腹になった子猫がまた眠りはじめたころだった。
*
「ご連絡先はどうしますか?」
お会計に呼ばれ財布の中身を確認していると、受付のお姉さんが私たちに尋ねた。
問診票の飼い主欄が空白のままだからだ。
とりあえず私と私の親の名前を書いておこうとボールペンをつかんだら、「オレが書くよ」と舞野が問診票を手に取った。
「大丈夫?」
「大丈夫……」
それなら、と一歩引いて、舞野が空欄を埋める様子を見る。
ゆっくり丁寧に、一文字ずつ。
自分が責任を持つんだと噛みしめるような書き方だった。
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