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4. 子猫と2人の今後について
「本当に大丈夫?」
動物病院を出て聞いてみる。
大丈夫とは言ってたけど、あまり自信がなさそうに見えたから。
案の定、舞野は両眉を下げて、困ったように笑った。
「実は……電話では無理って言われたんだ。けど、諦めたくないんだよな。だからもう一度説得してみる」
「私も親に聞いてみるから、もし無理そうなら……」
「ありがとう。でも、この子猫は手放したくないんだ」
「そっか。うん、がんばれ」
箱をかかえる舞野から強い意志を感じる。
これは……電話越しで伝わらなかった熱意も、お母さんに伝わるんじゃないかと期待したくなってきた。
*
そして今、私は舞野の家の前にいる。
結末が気になりすぎたし、舞野にもついてきて欲しいと言われたから。
空は夕焼けに染まりつつあって、住宅街のこの辺りは、夕ご飯の匂いがそこかしこから漂ってくる。
「じゃあ、話してくる」
自分の家なのに、まるで敵陣に乗りこむような勇ましい顔で舞野は入っていった。
がんばれ。
手に汗がにじむ。
夕方から夜になるのを察知した秋の虫たちが、大演奏し始めた。
応援歌のような……いや、野次馬かな。
でも何もないよりずっといい。
時間を持て余すといつもスマホ画面とこんにちはするのに、今はそれどころじゃない。
舞野家のドアを前に、両手を組んで祈る。
*
もっとずっと待つと思っていたのに、案外早くドアが開いた。
出てきた舞野はダンボールを抱えてない。
「どうだった……?」
耐えきれず尋ねた私に、舞野はピースをして、あの大口笑顔になった。
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