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「なるほどなぁ…完全数は分からんが、柚紀は知ってたから、すぐに頭に入ったのか」
「なんか、見覚えあるなぁ…って思ったのと、智の言葉で、なるほど…って思った」
「ゆず、お利口さんね~」
母さんが、頭を撫でてくる
「やめてよ、母さん!何歳だと思ってんの?!」
「あら、ゆずは可愛いから、まだまだ大丈夫よ」
「そうだな…柚紀、全然おかしくないぞ?」
「うん。パジャマで、おばさんに頭撫でてもらってる姿可愛いよ」
「生田、波多野!嬉しくない!」
高校生だぞ!
俺は、男子高校生だぞ!
「なぁ、柚紀。2桁だから仕方ないってのは、3桁と4桁を崩しちゃったって意味か?」
「ん~…智の頭ん中の事だから分かんないけど、きっとそうなんだろね?」
「なるほどなぁ…なんで、完璧な6から始めなかったんだろな?6、28、49、6なら、完璧な数字で始まって、完璧な数字で終わんのにな?それに、5桁とかもあんだろ?ま…そいつじゃなきゃ、分かんねぇか…」
確かに…
でも…なんとなくだけど…
「なんかさ、テレビで見たけど、その智って子、ほんとに数字以外は子供くらいの知能みたいで、だから勿論盗んだ時も居なかったし、ほんとに金庫の番号の管理だけしてたんだって。他の2人も、仲が良いって訳でもないし、公平にする為に、その子に決めさせたみたい」
「なんか、ずっと喧嘩してたもんな?あの2人…」
「まあ、そうなの?仲間を大切にしないから、上手くいかなかったのね?」
仲間を…
智を仲間だと…思ってたのかな…
「それで、口止めする為に、どうしても欲しいって言った物を1つだけ渡したんだって。それが、交番に持ってった、小さな黄金のフイギュアだったみたいだよ?」
「まさか、そんな奴が、自主しに行くなんて思わないよなぁ…」
あの時の智の顔を思い出す
1人でキョロキョロして探してて
交番着くと、ほっとして
「きっと智…最初から自主する気だったんだ」
「え?」
「交番に連れてったら、凄く安心してた。智…あまり上手く話せてなかったけど、あの黄金のフイギュアと、メモ用紙見て、警察官の人…すぐに慌て出してた。自分が上手く話せないのも知ってて…あれを欲しがったんだ」
「まあ!いい子!」
「マジで?!」
上手く話せないのに
たった1人で、警察行くって
すごい勇気…
「きっと智にとって…完璧な6で終わるって…自分達のした事、自主して終わるって事だったんじゃないかな?まさか、あの後2人が俺を…なんて考えてなかったろうし…」
「そうだよなぁ…そいつは、そんなの一切知らないもんなぁ…」
「智が仲間って思ってもらえてたのかは分からないけど、智は2人の事も、ちゃんと救おうとしてたんだ」
「きっとその子は、重い罰は受けずに済むわね?」
それならいいな…
俺は、数字なんか詳しくないけど
絵とか、物語を書くとか…
その世界に、のめり込むっていう感覚は分かるから
なんとなく思う
返さなければならない物を入れた金庫を
完璧な数字の6で塞いじゃダメだって、思ったんじゃないかな?
6で始まって6で終わって
自分達だけで完結しちゃダメだって気持ちが…どっかにあったんじゃないかな…
「それにしても、佐野は俺より数学が得意とか言い出して…俺、内心すげぇ冷や汗かいてたぞ?」
「ごめん…そうでもしないと、佐野と少しも話せないと思って…」
「なんか、犯人から情報集めたり、犯人に要求したり…俺はもういちいち、ハラハラドキドキだったぞ…」
「犯人に要求?!すげぇな柚紀!」
「なになに?どんな要求したの?」
話し疲れた俺の代わりに
佐野が皆に説明してくれた
「凄いな?柚紀」
「柚紀って、やっぱり瑞紀先輩の弟なんだね?」
瑞紀の弟…
って、思われるのは…ちょっと嬉しい
母さんが、夕食の支度を再開して
生田と波多野が話を始めた
「佐野…」
「ん?」
佐野の右腕にしがみ付く
「いっ?!なんで、くっ付いてくんだ?」
「お~…柚紀が、堂々といちゃつき始めたぞ」
生田が、またからかい始めたけど…
「あのね、智…ほんの少し…里桜に似てた」
「……そっか。里桜…時々思い出してくれて、きっと喜んでるな?」
「うん…佐野が……一緒に知ってくれてる人が居るから、話せる…ありがとう」
佐野の腕に顔を埋める
思い出す度思う
短過ぎた…
はっきりと顔が似てた訳じゃない
雰囲気だろうか…
沢山の思いを1人で抱えて
頑張ってる姿が
重なって見えたのかもしれない
佐野の腕と匂いで安心して
気付くと俺は、ソファーで眠っていた
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