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柚紀の誘拐
ある日の学校の帰り道
キョロキョロ キョロキョロしながら歩いてる子が少し先に居る
俺と、そんなに歳変わらなそう…
これは、間違いなく迷子だろう
迷子の気持ちが、よく分かる俺は、その子に近付いてった
「あの…」
ビクッ!
あ…驚かせちゃった
「あの…もしかして迷…道に迷ってますか?」
「あ…あ、あ…」
こくこくと頷く
「実は、俺もよく迷子になるので…でも、この辺は詳しいですよ?何処探してるんですか?」
「あ…け…け、け…警察…」
日本人に見えるけど、外人さん?
日本語、片言なのかな
とりあえず、交番連れてけばいっか
「交番なら、すぐ近くです。行きましょ」
「あ…」
凄く安心した顔で、俺に付いて来たその子は
あまりにも早く居なくなってしまった
俺の大切な友人に、ほんの少し似ていた
「すいませ~ん!」
「はい、こんにちは」
「こんにちは。あの…こちらの人が、何か用事があるみたいで…」
「ん?何かな?中にどうぞ?」
それじゃ…と、帰ろうかと思うと
その子に縋る様な目で見られ
「えっと…居て欲しいって事…かな?」
と、聞くと、こくこくと頷いた
仕方なく、一緒に交番の椅子に座ると
「さて、どんな用事かな?」
お巡りさんが、そう聞いてきた
すると、その子が上着のポケットから、何かを取り出した
金色に輝くそれは、親指サイズで
小さな子供達のヒーロー
パンで出来てるキャラクターを模した物だった
それから、メモ用紙…
なんだ?
俺が、不思議そうにそれを見つめていると
「こっ…これ…これは?!君…もしかして、これ…あの店から盗んだ物かい?」
「え?」
盗む?
この子が?
すると、その子が…
こくんと、しっかり頷いた
え…
盗む?
万引き?
しかも、このオモチャみたいのを?
たかがオモチャ1つ盗んだにしては、動揺し過ぎて、何処かに急いで電話してるお巡りさんを見て
まさか、こっちのメモ用紙の事か?
とも思ったけど、まるで意味が分からない
やっぱ、このフィギュア?なのかな…
あの店って…
こういうの、いっぱい置いてるお店あるのかな?
そこから、被害届出てたのかな?
2つの物を、じっと見てると
「2桁だから…仕方ないんだ…でも…6は完璧だから…6で終われて良かった」
さっきまでより流暢に喋り出した
メモ用紙には、幾つかの数字が書かれてて
確かに、最後は6って書いてる
よく分からないけど
とても、この子が万引きした様には見えない
騙されたか…脅されたのか…
それで、自主しようと思ったのかな
その後、俺達2人の名前や連絡先を、用紙に記入し…
あんまりジロジロ見れなかったけど
折原 智
さっきは、ちゃんと話せてたし
話すの苦手なのかな
用紙を書き終える頃、1人のお巡りさんが来て
状況説明してると、また別のお巡りさんが来て…
なんか、凄い事になってきた
俺…帰っていいのかな…
「あの…そろそろ俺…」
「ゆず!」
「瑞紀?」
交番の入り口に瑞紀
「何事だ?」
「えっと…」
「あっ…もしかして君、柚紀君かい?」
「え?…はい」
何人か来た中の1人のお巡りさんが、話し掛けてくる
何で、俺の事知ってるんだろ?
「おじさんは、10年位前の数年、ここの交番勤務だったからね。時々迷子になった柚紀君が、この交番に来てね、今みたいにお母さんや、瑞紀君が迎えに来てくれてたのを思い出したよ」
「え…」
10年位前の数年…
と、言う事は
俺が、小学校上がった頃か
それは…しょっちゅう迷子になってた
そう言われてみると、なんか見覚えがある
「その節は…大変お世話になりました」
「いやいや、こんな形で再会できるなんてなぁ。柚紀君も瑞紀君も大きくなったなぁ…」
「あの、この騒ぎは…柚紀は、関係あるんですか?」
「あ、ちょっと待ってな?」
そのお巡りさんが、最初に居たお巡りさんと、何か話してる
「ゆず、帰って来ないし、母さんに連絡ないし…」
「あ…忘れてた」
「母さんのGPS見たら、この交番から動かないし…まさか今さら迷子でもないだろうし…」
「なっ…?!ここまで来て迷子になる訳ないだろ?!俺、もう高校生だぞ?!」
「そう思ったから、心配したんだろ?」
「うっ…ごめん」
話をしてたお巡りさんが戻って来ると
「柚紀君は、その子を連れて来ただけだし、念の為の連絡先も書いてくれてるから、もう帰って大丈夫だよ」
「そうですか…その子は一体……柚紀が何か巻き込まれる様な事はないですか?」
「ある事件の犯人の可能性があってね…あまり詳しくは言えないんだ。自主する犯人を、交番まで道案内してくれただけだから、巻き込まれるという事はないはずだが…気になる事があったら、いつでもこの交番においで?」
「分かりました…失礼します」
ある事件の犯人…
自主…
あの子が、そんな風には見えなかったけど…
「それじゃ…失礼します」
「ああ。元気でな?柚紀君」
ふと振り返ると
あの子が、少しだけ振り返って
やっぱり、少し安心した様な顔で、軽く頭を下げた
家までの道のりで、あの子に会ってからの事を、瑞紀に話す
「はぁ…どうしてゆずは、迷子と面倒事を呼び込むんだ…」
「俺のせいじゃないもん」
「やっぱ俺もスマホ持とうかなぁ…」
「えっ?!嘘?!瑞紀…大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ。けど、ゆずの危険を逸早く察知出来るなら、考えようかな…」
「やめなよ!毎日寝不足だよ?」
「だよな~?けどな…」
瑞紀が何か考えてる
何を考えてるかは、あまり考えたくない
その日の夜は、今日あった出来事で家族で盛り上がり
なんと、家族全員が、そのお巡りさんの事を覚えてた
どれだけお世話になってたの?俺…
だからと言って、何が起きるでもなく
俺は、次の日学校で話したくらいで
すぐに忘れてしまってた
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