3人が本棚に入れています
本棚に追加
衝撃的な事実を知った
なんとも言えない気持ちになった夕食を終え
俺と瑞紀がソファーに座ると
「ん?これは?」
瑞紀が、テーブルの上に乗ってる紙に気付いた
「今日、佐野達が来た時に、佐野が他の友達や母さんに、説明するのに書いたんだよ」
「ふ~ん?…これ、昨日の金庫のダイヤル番号なの?」
「そうだよ」
「ふっ…なるほどな。だからゆずは、すぐに覚える事が出来たんだ」
「…え?瑞紀も完全数知ってたの?」
「……まあな」
何…今の間
まあ、瑞紀なら、知ってても別に不思議じゃないけど…
「あれは…ゆずが中1の頃だったろうか…」
「え?何?急に…」
「次の日が、土曜日というのもあって、油断したんだろな?朝、全然起きて来ないから見に行くと、机に突っ伏して寝てた」
「?…だから、急に何?」
完全数の話、どこ行ったの?
「ゆずの顔の傍には、書きかけの物語…」
「え?」
「何だったかな…確か…4桁までの完全数くらい覚えておいてくれ。たった4つなんだから」
「……え?」
「6、28、496、8128。これ位なら覚えられるだろ?だったかな?」
「なっ…なんでそれ?!」
「だから、ゆずを起こそうとしたら、見えちゃったんだよ」
「んなっ?!」
知らなかった!
普段、ミステリーとか書かないのに
なんか書いてみたくなって
結局、全然いい物語書けなくて、途中で挫折した……あれを、読まれてた!
「ん?なんで、そんな顔赤くなってんだ?」
「あれは!ちゃんと完成してない!ってか…失敗作の未完成で…なのに、勝手に見ないでよ!」
「たった何行か見えただけだよ」
「それでも!そんなの見られたら恥ずかしいの!」
「へぇ~…ゆず、未完成の作品見られると、こんな可愛いくなるんだ…覚えとこ」
「え…」
なんか…
余計な情報を与えてしまった様な…
「次はゆず、いつ物語書くのかなぁ…未完成になんないかなぁ…」
「なっ…ならない!…ってか、見に来るな!」
「え~?ゆずの頭の中知りたいじゃん?いつになったら、キスとかする物語書く様になるのかなぁ…とか」
「キッ…?!そっ…そういうのは書かないの!」
「ふっ…かわい…」
そう言って、ぎゅっと抱き締めてくる
「んむっ?!離せよ!」
「やだ」
「やだじゃない!」
「ゆず…早く気付いてやれなくて、ごめん。そんな怪我する前に、助けてやれなくて、ごめん」
「……それ、昨日聞いたよ?ちゃんと助けに来てくれたじゃん」
「そりゃ…いくら瑞紀先輩だって、高校生だしな…」
そう
瑞紀は凄いけど
俺と同じ高校生
たった1歳しか違わないだけ
なのに…必ず…
「もっと…いい方法あったかもしれない…もっと早くどうにか出来たかもしれない」
「瑞紀は、警察でも探偵でもないよ。警察騙すなんて、とんでもない事までして、助けてくれたじゃん?」
「冷静にって…思ってたけど…どこかで焦ってたから…どうしよう…ゆずに何かあったら、どうしよう…って……」
瑞紀が、こんな弱み見せるなんて…
俺が目覚めた時も、泣きそうだった
「そんなの当たり前だよ。俺もね、怖いって思ったら、もう何にも考えられなくなりそうで…物語の主人公になってた」
「ゆずの書いた物語?」
「適当。とにかく…犯人との頭脳戦に勝って…無事救出される主人公……けど…警察来てくれたのに…出て行っちゃって…ナイフ…刺された時は……」
「ゆず…」
今さら…
体が震える
「ちょっと…ダメかもとか…思ったけど……でも、警察来てくれたって事は、瑞紀が居る。佐野が救出されたって事は、今の状況分かってる。だから…絶対どっちか、俺のサイン気付いてくれるって思った」
「うん。佐野君から聞いて、すぐに分かったよ。ゆずは、ちゃんと最後のチャンス…残しといてくれたんだって…怖かったのに、よく頑張ったな?」
「~っ…」
怖かった
凄く怖かった
だって…
俺より大きな佐野、一撃で…
力でなんか到底敵わない
頭使うしかない
「~~っ…瑞紀っ…怖かった」
「うん…凄く怖かったな?」
「んっ…っ…凄くっ…凄くっ…怖かった…」
「なのに…ゆず、凄く頑張った」
「んっ…頑張っ…た」
「凄いな?ゆず…」
1歳しか違わない俺のお兄ちゃんは
よく道に迷う俺を探さなきゃなんなくて
トイレ行くのも心配になっちゃうくらい
手のかかる弟で
なのに…
全然呆れて離れて行ったりしない
いつも、必ず、何とかしてくれる
そう思わせてくれるくらい
頼もしくて
それは、瑞紀が、お兄ちゃんで居る為に
色んな事我慢して、頑張ってるお陰で
だから…
たまには、兄孝行
してやってもいいかなとか…思う
「ありがとう…お兄ちゃん」
「………え?……え?…え?え?!今…お兄ちゃんって…ゆず、もう1回!」
「あら~…ゆず、お兄ちゃんに甘えてたの~?可愛いわね~」
「うちは、兄弟仲良しで幸せだな~」
向こうから、のんびりとした父さんと母さんの声が聞こえてくる
「ね?ゆず、もう1回だけ!」
「もう終わり」
「お願い!もう1回!」
お兄ちゃんなんて、いい事ないのに
お兄ちゃんって呼んでもらいたい瑞紀
それは、俺のお兄ちゃんで嬉しいよって言われてるみたいで
少し照れ臭い
「もう、当分は瑞紀なの!」
「なんだ~…ゆずはツンデレだな…」
ちゅっ
……え?
「お兄ちゃんって、呼んでくれるまで、色んなとこキスしよっと」
「なっ…はあ?」
ちゅっ ちゅっ
「あらあら…良かったわね?ゆず」
「あれ…それは…どうかな?いいのか?」
「あら眞紀さん。海外でも通じるご挨拶よ。今のうちに慣れといた方がいいわ?」
「そっ…そうか?」
「ほら、眞紀さんも…ちゅっ」
「そ…そうだな?慣れとこ慣れとこ…ちゅっ」
なんか…聞こえてくる
けど…
それどころじゃない!
「やめろ!兄弟でキ…キス…なんてしない!」
「俺はするんだよ。お兄ちゃん、やめて?って、可愛いく言ったら、やめたげる」
ちゅっ ちゅっ
どっちもやだ!
けど…
「おっ…お兄ちゃん…やめて?」
「…………ゆず~!可愛い~!」
「うえっ!」
ぎゅむ!っと抱き締められた
「はっ…離せ…」
「可愛いな~。俺の弟は世界一可愛い」
お兄ちゃんが、弟にキスをして
それを見た両親も、多分キスしてて
こんな、変わった家族ないと思う
けど…
俺が今幸せなのは
俺の周りに、いい人ばかりが集まってきてくれるのは
きっと、この家族のお陰だから
抵抗出来ないフリをして
お兄ちゃんの熱すぎる愛情を受け止める
今はこの…
変わった家族の溢れんばかりの愛情を
存分に受け止めよう
永遠に続くものなんて、ないんだから
最初のコメントを投稿しよう!