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柚紀の救出
おかしい
ゆずの帰りが遅いので、母さんにスマホを貸してもらうと、ゆずが行くはずのない場所を移動している
この時間から、何処かへ行くなら、連絡するはずだ
連絡忘れてるだけ?
それとも、連絡出来ない状況?
この前の交番での事が思い出される
あの時、僅かに見えた金色の可愛らしい物
母さんのスマホで調べた黄金展
幾つかの展示物が盗まれたのが、ゆずが交番に行く2日前
盗まれた展示物の中には、交番で見た可愛らしい物に、よく似た物も載っていた
ゆずに、防犯ブザーでも持たせようかと思ったが
もしも、その事件に関する様な奴らなら
防犯ブザーなんかで諦めるだろうか?
とりあえず俺は、ゆずにある物をプレゼントした
「ゆず…」
「何?」
「これさ、しばらくベルトにでも付けといて」
「何これ?」
「ちょっとした実験なんだけど、ゆずにとっては、ただのキーホルダーだから」
「ふ~ん?」
キーホルダータイプのGPS
今時、携帯は没収されるかもしれない
念には念を…
そのキーホルダータイプと、携帯、双方のGPSが、まるで違う町へと向かっている
佐野君に連絡しても、応答なし
佐野君も一緒か?
「母さん…」
「何~?」
「ゆず…誘拐されたかも」
「まあ、大変!…包丁くらいしかないわ~…あと…トンカチとか持ってく?」
「母さん…戦う気、満々だね?」
「勿論!」
「まずは、プロに戦ってもらえる様に、頭脳戦だ」
「じゃあ、瑞紀にお任せね~」
こんな時…
母さんは、全く動揺しない
そして…
ゆずも、母さんの血を受け継いでいる
きっと、俺がどうにかするって
最後まで考えて行動するはずだ
落ち着け
何処かに連れてくという事は
その場で殺さないという事は
何か目的があるはずだ
時間があるはずだ
ある場所でGPSが止まる
ここは…
普通のアパート…
「母さん、ゆずのとこ行こう」
「分かったわ!何持ってく?」
「母さんが警察に捕まらない物だけ持って」
タクシーに乗り、場所を指示して
110
「もしもし…」
そのアパートに、高校生くらいの子が、目隠しと、手を縛られて入ってくのを見たと、近所を通りかかった友達から相談された
そして、弟が帰って来ず、連絡が付かないと、説明した
とりあえず、何だっていいから、警察を呼んでおかないと
「瑞紀ったら、ゆずの台本でもあるの?スラスラ言葉が出てくるのね~?」
「どうにかして、アパートの何処なのか特定出来ればいいけど…」
「何か事件ですか?」
タクシーの運転手さんが話し掛けてくる
「弟が行方不明です。GPSで、今から向かうアパートに居るようなんですが…」
「なるほど…あの辺は、人通り少ないし、怪しいですね~」
「まあ…怪しいのね~?」
「怪しいね~」
母さんのスマホを見てると、GPSが二手に別れ始めた
携帯が移動、キーホルダーがアパート
携帯を捨てに行ったか
キーホルダータイプに気付いたか?
ゆずは、どっちだ?
アパートの近くまで行くと、パトカーが停まっていた
タクシーから降りて、事情を説明しようと、パトカーへ向かうと、警察官がパトカーから降りて来た
その人は…
「瑞紀君!」
「あ…あなたは…都筑さん!」
「まあ…お久しぶりです!」
この前、交番で再会したばかりの
あの懐かしの警察官だった
「どうして、瑞紀君がここに?」
「実は…」
都筑さんに、一連の事を話す
都筑さんは今、この近くの交番勤務だったらしい
「嘘吐いてすいません」
「いやいや。あの事件の犯人と接点があったし、それで行方不明、GPSでこんな場所となれば、かなり信憑性があるね。犯人の1人が何処かへ行ったか、一緒に行ったのか…とにかく、1度報告して応援呼ぶから」
「ありがとうございます」
結局、都筑さんは、俺達をパトカーに乗せてくれて
現場から、少し離れた場所で待機となった
刺激をしない様に、アパートの周りに警察官が待機
どうやら、このアパートには現在、1階と2階に1軒ずつ入居者が居るらしく
2階は、いわゆる夜の商売の男の人
既に今日は仕事なのか人気がないとの事
1階は、3ヶ月程家賃を滞納してて、ほとんど家に寄り付かない、男性が一人暮らし
それが、今日は電気が点いているとの事で、かなり、その場所、その男が怪しいとなった
念の為、ゆずや佐野君が居た店にも、確認に行ったらしく
店の防犯カメラに、バッチリゆずと佐野君が拐われる所が映ってたらしく
犯人の車のナンバーから、犯人を特定中らしい
「あ、そうだわ!佐野君のお母さん…電話番号分かんないわね~?」
「警察の方で調べてみましょう」
「そうよね~。知ってた方がいいわよね~?あっ!お父さんにも連絡しとこっと」
母さんのスマホを覗いてみると
『ゆずが佐野君と誘拐中』
『都筑さんのパトカーで、瑞紀と待機中』
「これで、ヨシ!っと」
ヨシなんだ
いいのかな…
ってか、電話じゃなくていいの?
しばらくすると、無線が入って騒がしくなる
どうやら、アパートに車が戻って来たところを、警察官が事情聴取に向かったところ、逃走しようとして、確保
全てを吐かせたらしい
やっぱり、あの事件の犯人で
交番に自主して来た子の兄だったらしい
盗んだ物を入れた金庫は、ダイヤル式
数字を何かに書き記し
万が一にも誰かの目に触れる事を恐れた奴らは
知能的には不自由があり
反抗や裏切り等、考えるはずもないが
何故だか数字にだけは、特化した頭脳の持ち主のあの子に、覚えさせたらしい
そして、あろう事か…
あの交番で、その数字を書いたメモ用紙を、警察に差し出していたらしい
ゆずは、その場に居た
ただ…ゆずが、それを覚える位、ちゃんと見てたのかは不明
仲間が、あのアパートで、ゆずと佐野君を監禁してるらしい
金庫もそこにあると…
次々と入ってくる情報で
少しずつ、数字を思い出してきてるらしいと、仲間との電話から分かったとの情報
これは…
「都筑さん…」
「どうかしたかい?」
「ゆずは多分…全部覚えてると思います」
「えっ?!どういう事?」
「ゆずは、方向感覚は壊滅的ですが、瞬間的な記憶力は凄くいいんです」
少し覚えてるは…多分全部覚えてるだ
時間…稼いでるんだ
「全く思い出さないなら、知らないのに連れてかれただけかもしれませんが、少しでも知ってるなら、全部知ってる可能性高いです。ゆずは…時間稼ぎをしています」
「まあ~…ゆずったら賢い子ね~」
母さん…
警察の人…若干引いてるよ…
犯人の1人からの情報を元に作戦を立て
犯人が帰宅のタイミングで
救出作戦となった
待ってろ…ゆず
絶対助けてやる
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