柚紀の目覚め

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夜中に何回か、誰か見に来てた気がする 母さん?瑞紀? 体がだるくて、瞼が開かない 「おはよう…ゆず」 「瑞紀…おはよう」 「やっぱり少し熱あるかな…あんな事あって眠れたか?」 瑞紀が、俺のおでこを触りながら聞いてくる 「疲れてたから、ぐっすり」 「流石だな」 「瑞紀、夜中見に来た?」 「気付いてたのか?」 「なんとなく、何回か誰かが来てたかなって」 「そっか。俺は1回だけど、母さんかもな。痛みは?足見せて?」 瑞紀が、布団を剥いで、パジャマのズボンをぐい~っと上げて、太ももを見る 「やっぱ、触ったり、動かしたりすると痛い……血…出てる?」 「沢山ガーゼ当ててくれてるから、上までは滲みてないよ」 「そっか…ふぁ~…俺も起きたから、ご飯食べに行こっと」 「持って来ようか?」 「大丈夫」 ゆっくり1段ずつ階段を下りて リビングに入ると 「お?ゆず起きたのか?まだ寝てればいいのに」 「あら~…黒にゃんこちゃん起きて来たのね~?」 「黒にゃんこ…ちゃん?」 瑞紀を見ると、瑞紀も首を傾げてる とりあえず、洗面を済ませて、ご飯を食べに行くと 「見て見て~!ゆずが、いっぱい出てるのよ~」 「いっぱい出てるって?」 母さんの指す先はテレビ 俺じゃなくて、柚の話?とか思いながらテレビを見ると… 「………なっ?!なんでっ?!何?!」 「あ~…前夜祭の時の黒にゃんこか」 そう 瑞紀の言う通り テレビに映し出されてたのは、前夜祭で黒猫にさせられた時の俺の写真 何?! 「あの事件、結構大きく報道されてたからなぁ…それが、あんな形で逮捕されたから、しばらくはこのニュースばっかりだろうな」 「え?」 「確かに…あれだけで、結構な事件なのに、それが捕まってなかった黄金展の犯人だったもんなぁ…ゆず、全国デビューだな?」 「なっ…なんで…なんで佐野は普通の写真で、俺はあの写真なんだよ?!」 佐野は、普通の集合写真を拡大したのか ちゃんとしてるし なんなら、少しボヤけてる なのに俺は… 「そりゃ…ゆずのあの可愛い写真が出回って、アップだし、何より可愛いからだろ」 「こんなの!全国の人に見られる為に着たんじゃないよ!」 「まあまあ、ゆず。可愛いんだから、なんの問題もないわ?」 「そうだぞ?ゆず。神付家の一員として、今日も朝から全国に癒しを届けてるんだ。素晴らしいじゃないか」 俺の家族は変わっている だから、息子のあんな姿が全国放送されても 誰も驚きもしない 「さ、食べるわよ?」 「いただきま~す」 「いただきます」 「ゆず?」 「……いただきます」 学校に行った瑞紀と、仕事に行った父さんは、大変な騒ぎの渦中の人物となってたらしいけど 俺と母さんは家でのんびりと過ごしていた 「ゆず、ちょっと傷口見せて?」 「うん…血、出てる?」 「昨日、かなり洗ってくれたみたいだからね~。あ、でも大丈夫よ?先生かなりガーゼ厚めに当ててくれたから」 「金曜日の受診まで、お風呂入れないの?」 「金曜日に先生が傷口確認して、シャワー浴びても大丈夫なテープに変えれたらね」 長い 足以外なんともないのに 「頭洗うのもダメ?」 「ん~…熱が高くなければ許可します」 「ほんと?」 「今のうちに洗っちゃう?ちょっと1回検温して~…」 ピピッ 37.3℃ 「よし、洗っちゃお!」 「うん!」 って… 「なんで母さんも来たの?」 「えっ?お母さんが洗ってあげるでしょ?」 「1人で出来るってば!」 「あ、1人で出来るもんだわ…ゆずったら…立って、前屈みになってると、足痛くなってくるのよ?」 「ザッと洗うから大丈夫」 「そう?お母さん、近くで待機してるから、呼んでね?」 全然1人で大丈夫だったけど 母さんが言った通り、洗い終わると ズキズキと傷口が痛み出した 「母さん…痛くなってきた」 「そうよね…ちょっと早いけど、お昼の分の痛み止め飲んじゃいましょ?」 「いいの?」 「お母さんが許可します!」 頼もしい ちょっと自分が弱った時 明るくて元気な母さんは 凄く頼もしい 「ゆず、ソファーじゃ、ちゃんと休めないでしょ?そっちにお布団敷いたから、お布団で寝ましょ?」 「ん…」 こんな時… まだまだ子供だなって思う 全部考えて、準備してもらって… 「母さん…ありがと」 「1人で出来るもんは、終わりかしら?」 ころんと、横になると 布団を掛けてくれる 「ちょっと…寝るね…」 「おやすみ…ゆず」 母さんだって、俺達が生まれるまでは 母さんじゃなかったんだ 元々頼もしかったのかな 母さんになって 頼もしくなんなきゃ、いけなかったのかな 俺達の知らないとこでは… 母さんも、泣いたりしてるのかな 父さんには… ちゃんと見せたりするのかな…… 痛み止めが効いた俺は、ぐっすり眠り 少し遅くなったお昼ご飯を食べ 熱のせいか、痛みのせいか だるい体を、また休めた やっぱり学校…休んで良かった…… ピンポ~ン ぐっすり眠って、すっかり忘れてた 佐野が来るという事を なんか、ガヤガヤ煩いなくらいに思って まだウトウトしてると 「ゆず…ゆず…」 「あ、起こさなくて大丈夫です。すぐ帰りますから」 あ…佐野の声だ 「…佐野?」 「柚紀…大丈夫か?」 「ん……ん?」 佐野の隣にも… 「柚紀、怪我したんだろ?痛いのか?可哀想に…」 「柚紀お前、有名人になってんぞ?」 「波多野と生田も来てくれたの?」 重病人みたいになっちゃってる 「だってお前、すっげぇ騒ぎなんだぞ?」 「?…騒ぎって?」 「テレビ見てねぇのか?!ずっと柚紀出てるぞ?」 「テレビ…あっ!今朝の!…見た…前夜祭の写真が使われてた…」 「もはや、それだけじゃねぇよ!犯人逮捕に貢献した兄として、瑞紀先輩も出てるし」 「えっ?瑞紀も?」 「ほら、見ろ」 生田が、自分のスマホでニュースを見せてくれる そこには… ヴァンパイア瑞紀のマントの中に捕獲されてる、黒猫の俺が居た……
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