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まぶたの裏に、薄明かりが浮かんだ。目を開けると月明かりのような淡い光が体を包んでいた。
駿の前に小ぶりな鳥がこちらを見下ろしていた。よく見ると冬毛のオスの雷鳥のようだ。白い姿につぶらな瞳。目のそばにある真っ赤な肉冠がよく目立った。
丸みをおびた雷鳥が話しかけてきた。
その声は少年のように幼かった。
「僕は人間を何度も見てきた。ハイマツのすきまから」
「俺も雷鳥なら、山ん中で何度もみたことある」
駿はいつものように、ぶっきらぼうに返事をした。
「人間はいつも笑っていた。僕は人間になりたいんだ」
「なりたきゃなれよ。だが楽しいことばっかじゃないぜ」
「人間になって、いろんな山の景色を見てみたいんだ」
「人間になれば、どんな景色でも見放題さ」
「僕の力では、あなたを救い出すことはできない」
「......そうか」
「でも君の魂があれば、僕は人間に生まれ変わることができる」
「俺の魂が欲しいのか」
「うん」
「いいだろう。ただし一つだけ条件がある」
「いいよ、言ってみて」
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