山の灯火

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「ありがとう、ファミさん。本当に、こんな話を聞いてもらえて何か楽になったわ。まだもう迷うことはないし、日が暮れるまではまだ時間がある。さぁ行こう!あたしの耳に響く声に従って」 レミーはベルクライトのカウンターに置いた手をそっと離した。そしてファミに向けて 「ありがとう、ファミさん」 と静かに感謝の言葉を口にすると、荷物を掴むと店のドアへ歩を進めた。 「レミー」とファミがその背中に優しい声をかけた。 レミーは振り返り、微笑むファミが静かに語りかけるのを見つめる。 「外の世界で何が待っているのかはわからない。でも、あなたの決意が本物なら、きっとどこまでも歩いていける筈よ。迷う時は、灯台の灯りを思い出して。いつでもあなたを照らしているから」 レミーは頷き、軽く微笑んだ。 「外の世界で何かを見つけて、ここに持って帰ってくる」 その言葉にファミは小さく頷き、「行ってらっしゃい」と呟いた。 レミーがドアを開けて店の外に出ると、ソラがすぐさま荷物を騒がしくかき集め、店内の静けさが一瞬にして破られた。 「レミー、一緒に行こうぜ。じゃ、ファミさん。俺も行くよ」 と言い、笑顔を見せる。 「気をつけてね、ソラくん。青い天上の向こう側、見てきて頂戴ね」 とファミが軽く肩をすくめながら笑う。 「行ってらっしゃい、夢追う人たち」 ドアが閉じられる。 二人の足音が外に遠ざかっていくのを聞きながら、シドは少年のような無邪気な笑顔をたたえていた。それは、初めて親から工作キットを買い与えられた子供のように-』 「(そら)()くーん、()(れい)ちゃーん、みんな教室に入ってー」
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