山の灯火

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「大人になるにつれて、何か違和感を覚えるようになった。なんて言ったらいいかな……町の中だけの限られた空間で適当な成り行きで物事が体よく進められているような感覚?あたしは外の世界のことをもっと知りたくなったの。四方の絶壁を越えて、ごくまれに旅人たちが町に来るじゃない?この町は外界の人間との接触を禁じているけど、うちは家の仕事柄、親がそういう外界の人間を招いて話をすることが結構あったわけ。こっそり外の話を聞くたびに胸が高鳴るのよ。この町にはない未知の文化や人々の話……。それを聞いてると、私はこの木枠に囲われたような町の中で、ただの一つの歯車として生きることが耐えられなくなる」 ソラが深く頷きながら、 「それで、家業を継ぎたくなくて家を飛び出したってこと?」 と聞くと、レミーは一瞬目を伏せ物憂げな表情を見せた。 「……そうね、でも、ただ継ぎたくないってだけじゃない。自分の可能性をここに閉じ込めたくないの。この町では、みんな生まれた家の仕事をそのまま引き継いで、同じように歳を重ねていく。それが普通なんだって、みんな言う……いや、口にすることもなく受け入れているけど、私はそれに納得できない。外の世界には、もっとたくさんの生き方があるんじゃないかって思う」 レミーの目には、少し涙が滲んでいた。 「私はそんなふうに自分の人生を何だかよくわかんない運命みたいなやつに決められるのが、どうしても耐えられないの。自分で選びたい。自分の未来を、自分の手で掴みたいの」 レミーの言葉に、ソラは深く考え込んだ様子で何度も首を縦に振った。 「それ、すごくわかるよ。俺もずっと、自分が何を成し遂げられるのか分からなくて悩んでた。でも、だからこそ、自分の道を見つけたいって思ったんだ。ま、山のテッペンに登ったら気持ちイイんじゃないかって思っただけのことなんだけどね」 ファミもまた、レミーの気持ちに共感するように頷き、そう言いながらファミは部屋の奥にあるテーブル席のほうへ向き直ると、 「……だ、そうよ。何か知恵を授けてあげたら、学者さん?」 と声を掛けた。
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