山の灯火

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彼らの心の中には、山が象徴する閉鎖された世界から解放されたいという共通の願望があったのかもしれない。 ふと、レミーが思い出したように口を開いた。 「そういえば、ファミさんって、山を越えて向こうの世界を見たいとか思ったことないんですか?」 ソラも 「ファミさんって、こんな山ん中でお店やりながら町のみんなのために夜は灯りをともして照らす役目まで。ホント、尊敬しますよ。そもそも、ファミさんはなんで山の灯台守の仕事を続けているんですか?」 と質問を重ねた。 「ファミさん、あなたがいなければ、夜の灯りがなければこの町はもっと孤独だっただろうね」 シドも思うところあり気に呟いた。 ファミは彼らの言葉に少し寂しげな笑みを浮かべた。そして、 「みんなのために……か。本当にそう思う?」 と問いかけ、静かに言葉を続けた。 「この灯台を続けているのには、町のみんなのためではないの」 ベルクライトの店内は、夕方に差し掛かった冷たい風をよそに暖かな灯りが揺れていた。ファミは三人の顔を順に見つめて微笑んだ。 「この店を、そして町の灯りを守り続ける理由は……誇れるようなものじゃない。むしろ、自分の弱さを隠すためなのかもしれない」 その言葉を聞いたソラが、訝しげに眉をひそめた。 「どういうことですか?は、町のみんながファミさんに感謝してるじゃないですか」 ファミは小さく笑ったが、その笑みにはそれでもどこか哀愁が漂っていた。 「そうかもしれない。確かに町のみんなには感謝されているわ。でも、私がこの仕事を続けているのは、ただ誰かのためになるからじゃないの。むしろ……逃げているのよ。自分自身から、そして自分の過去からね」 ファミは深く息をつき、遠い過去に思いを馳せるように目を細めた。 しばらくの間、言葉を選んでいるように静かに佇んでいたが、やがてその口を開いた。
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