山の灯火

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「私も昔、レミーさんのように外の世界を夢見ていたの。この閉ざされた町が嫌で仕方がなかった。外に行けば、もっと自由で新しいことが待っているって信じていた。だけど……」 ファミは言葉を詰まらせ、少し間を置いた。 「外の世界に出ることで、失うものがあるとは思ってもいなかったの」 ソラはじっと耳を傾けていた。 「何かあったんですか?」 「私には、かつて大切な人がいたの。その人は私のことをとても大切に思ってくれていた。そして、私は外の世界に行こうって、彼にせがんだ。この町で私と一緒にずっと平穏な暮らしを望んでいたの。彼は私の願いを受け入れて、二人で山を越えることにした。でも、山を越えるのは簡単なことじゃなくて、夜になれば山の上は霧が濃くて道もわからなかった」 レミーはその言葉に身を乗り出し、ファミは目を伏せた。 「灯りもない山中で私は足を滑らせ滑落しそうになった。彼は、私を守ろうとして代わりに落ちたの。山壁から落ちて、そして……それっきり」 シドが静かにグラスを置き、深く息を吐いた。 「山には、まだ灯りがなかったのだね」 ファミは頷いた。 「それ以来、私は外の世界を追い求めることをやめたの。外に出れば何かが変わると思っていたけれど、私が失っただけだった。だから、この灯台を続けているのも、外の世界に夢を見た自分自身への罰みたいなもの。彼が失われた場所で、私はこうして光を灯し続ける。それが彼への罪滅ぼしなんだって自分に言い聞かせているの。ここで、このベルクライトの……鐘楼の灯りで町を照らせば彼のような目に遭う人もいなくなる。それに」 「それに?」 「それに、こうして町を照らし続ければ、もしかしたら、彼が戻ってきてくれるかもしれない、って」
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