禁忌の山

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「ひと月前から肉断ちをしろとご家族に言われたでしょう。なんで明日まで待てなかったんですか」 「だって、わたしは山にはいらないもの」 「祭りの終わりまでが祭祀です。こんな子供でもわかることを! これだからよそ者は」  隊員は鼻を鳴らした。 「あなたのそれは食あたりにみえまずが、このへんでは罰当たりといいます。処置をしても、神さんの気が済むまで、しばらく具合が悪いままです」  あまりの言い草に、僕は腹が立った。 「急病人にそれはちょっと言い過ぎでは?」 「神さんにまつわることは、この辺りでは死活問題なんですよ。よそ者にはわからないでしょうが」  吐き捨てるように言った隊員に、もう一人いた隊員が、まあまあ、と諫めつつ、小さく僕に頭を下げた。 「わたしもよそから来た口なので、お気持ちはわかります」  と、小声で僕に言うと、姉を担架に乗せて搬送していった。
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