禁忌の山

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 山は、恐ろしい場所だ。  そう思う出来事が、姉の嫁ぎ先の、田舎の町で起きた。  僕はカメラマンだが、山にまつわる依頼は受けられなくなった。三十歳前のひよっこが依頼をえり好みするなど、以前の僕だったらしなかっただろう。だが、これは銭金以上の、精神的安寧が優先されるものなのだ。  姉は、あの日を境に大好きだったハムが食べられなくなった。  ハムくらいならいいじゃないかと思うだろう。姉は、スーパーでハムだけでなく、精肉コーナーさえ気持ち悪くなるようになった。これは、経験しないとわからないかもしれない。
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