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全員、苦虫を嚙み潰したような顔をした。忌々し気に、はあのバカが、と舌打ちをする者もいた。
祠の周囲が、にわかに薄暗くなった。
空を仰げば、灰色をした厚い雲が広がっていた。遠くで低く雷鳴がした。
「まずい。一旦、下山する」
年かさの男が後ろを振り返らずにもと来た道を引き返し始めた。
ほかの男たちも続く。僕は一番最後を、小さくなってついて行った。帰りは重苦しい空気の中、誰も口をきかなかった。ほどなくして大粒の雨が降り始めた。だんだんと雨足が強くなり、僕たちはきつく背中を打ちつける雨のなか、小走りで降りていった。
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