料理教室

『気持ちを切り替えましょう』と暗に伝えてくれているようで、彼の心が少し軽くなった。こうして二人の間に漂う微妙な緊張が、レモンの酸味と共に和らいでいった。

「そうですね……リフレッシュって大事ですよね。」
ユウタは頷きながら、ナツミの言葉に応じた。「僕も、気持ちを切り替えた方がいいなって、今思いました」

　ナツミは微笑んで、小さく頷いた。
「何か新しいことを始めるとき、気持ちをリセットするのは大切ですよね。ユウタさんは何か新しいこと、挑戦したいことってありますか？」

「そうですね…」ユウタは少し考えてから、「実は、料理を始めてみたいと思っていて」

「料理ですか？」ナツミの目が少し輝いた。「それはいいですね。何か作ってみたいものがあるんですか？」

　ユウタは笑顔を浮かべた。
「そうですね、まずは唐揚げかな……次は自分で上手に作れるようになりたいです。そして、レモンとレモン絞り器を並べて」
　その冗談めいた言葉に、ナツミは、くすっと笑った。

「それなら、私が教えてさしあげましょうか？」
　ナツミは目を輝かせながら、少し身を乗り出した。

　その提案に、ユウタは思わず頬が緩んだ。