エマ キャンベル

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エマ キャンベル

「にいさま!今日はなんの日かしっていますか?」 「うん、エマの誕生日だろ?僕が忘れると思ったの?」 少し拗ねた表情で彼女の頬を摘めば、彼女はいたい、と言いながらも擽ったそうにはにかむ。 これだけ見れば彼女が悪役令嬢になるなんて微塵も思わないだろう。 いや実際、この無垢な姿のまま成長し、誰からも愛され何不自由なく暮らす予定だった。 しかしそれが全て覆るような、彼女が悪役になるようなきっかけがこの物語にはあったのだ。 それが今日。 彼女、エマ キャンベルの誕生日兼お披露目パーティーで起こる。 起こる、というよりも起こるための火種が撒かれる、という表現の方が正しいのか。 (はぁ…) 俺はふいに頭を抱えたい衝動に駆られた。 よりによって当日に転生してしまうとは。 準備も何もありゃしない。 何故こんなにも苛々しているのかというと、エマの死に方があまりに酷かったからである。 ゲームのシナリオを簡単に説明すると長年片思いし続けていた王子が急に現れた女性に想いを寄せ始め、エマは嫉妬から女性を虐めてしまう。 それを王子が知り、みんなの前でエマに国外追放を言い渡したのち王子と女性は結ばれるというもの。 それに心を病んだエマはとうとう自害を選ぶ。 乙女ゲームらしいので勿論他のキャラと結ばれる未来もあるのだが、そのどれでも彼女は死んでいた。 何故そうもエマを殺したがるのか、俺には作者の心情が理解できない。 もし国語のテストでその類の問いが出てきたのなら俺は一生100点を取ることができないだろう。 本来、悪役の断罪シーンというものはスカッと爽快的になれるはずなのだが、これに関しては俺に限らず首を傾げると思う。 だって非難するにはあまりにもエマキャンベルという存在は可哀想だった。 ……いや、もしかしたら作者がエマを殺したがるのは彼女の性質が主人公のようだったからかも。 悪役というにはあまりにも孤高で、華がある。かつプレイヤーを同情させる周りの環境。 早い段階で殺しておかないと主人公と攻略対象達にとって大きな障害になると思ったのかもしれない。 それでもだ。 本来はゲームとして楽しむ話であっても、今の俺にとってはこれが現実でエマが死ぬシナリオが未来である。 エマの兄、レオ キャンベルとして転生した以上見過ごすわけにはいかないし、妹が死ぬ未来をただ傍観するつもりもない。 だから時間が必要だったというのに、当日に転生してしまっては防ぐための作戦を考える暇もないため、久しく気を立てていたのだ。 「にいさま?今日はなんだかいつもとちがうみたい」 「本当?大切なエマの誕生日に僕まで気が緩んでるのかも」 ほら見ろ。 6歳になったばかりの妹でさえ気付くほど、俺は切羽詰まっているのだ。 これじゃ、前世は俳優だったなんて夢にも語れない。
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