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お披露目パーティー
剣の稽古が終わり侍女たちを断って風呂に入った後、俺は長い着せ替えに付き合わされていた。
「んー、さっきの方がレオ様の顔が明るく見えませんか?」
「でも落ち着いた色で知的さを出した方が良いと思います」
「レオ様は何を着ても良くお似合いになりますね」
「……はあ」
まあ、こうなるのも無理はないと思う。
だって元がとんでもなくいいから。
でも、それにしたって時間がかかりすぎじゃないか?
もうあと2時間くらいでパーティーが始まってしまうのに、髪のセットすらできていない。
俺だって作戦を立てる時間が必要なのに。
「……僕、これがいいです」
「えっ」
「レ、レオ様。それは少々地味かと…」
「僕には似合いませんか…?」
うるうると不安げに瞼を湿らせれば、侍女達は直ぐに否定をして髪のセットへと取り掛かり始める。
こんなに早く済むなら初めからこうしていれば良かった。
そうしてセットにも時間が掛かりながら、何とか無事に終えたらしい侍女たちは満足した笑みを浮かべながら部屋から出ていく。
その様子を横目に俺はため息をつきながら、ソファに身を沈めた。
暫くすると扉をノックする音が聞こえ、どうぞ、と中に促す。
入ってきたのは護衛のグレインだった。
グレインとはさっきの護衛騎士の名前で、先生に叱られている時に名前を知ったのだ。
「坊ちゃん、準備終わりましたか?」
どうやら彼もパーティーに同席するということで無造作にしていた髪が整えられている。
元々端正な顔立ちをしていたが、それが更に引き立てられキラキラと発光しているようだ。
こんな有望な男を世の女性は放っているのか。
「はい」
「おお、何だかいつもと雰囲気が違いますね」
「黒の服にしたからかな」
「そうかもしれません。男らしく見えますよ!」
白い歯を惜しみもなく晒して爽やかに笑う彼に「それは良かった」と頷いて立ち上がる。
そろそろ時間だから向かわないといけないし、作戦も大体決まった。
・・・・・
どこを見ても煌びやかな装飾、雰囲気に少し気持ちが浮つきながら足を進める。
その度、すでに会場に訪れていた貴族たちが我先にと挨拶をして来るので、軽く会話をしてから離れる、を繰り返していた。
こんな幼い子供に媚を売ったって仕方がないのに。
そしてやはり、と言うべきか会場には令嬢が多い。
きっと初のお披露目会でエマが緊張してしまわないようにという配慮だろう。
それでも図々しく訪れるのはゲームの攻略対象者たち。
性転換してこい、とまではいかないがせめて女装しろ。
まだ姿も見えない彼らに俺は愚痴をこぼす。
前にも言った通り、きっかけがあってエマは嫌われ者になるわけだからまだ現状、彼らはエマに大した印象を持っていない。
しかし将来エマを陥れる奴らは果たして性格がいいと言えるだろうか。
答えは言わずもがな。
つまり俺が彼らに対して敬意を払う必要はない。
そもそも攻略対象者達の中じゃ俺が1番年上だし。
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