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同じ夜の下を、桜庭萌々香は上機嫌で歩いていた。
ハロウィンを翌日に控え、街は浮かれていた。
オレンジ、紫、黒のガーランドフラッグがあちこちから垂れ下がり、にたにたと笑うカボチャの置物やイラストがあちこちに飾られている。
街中で出会ったおばけたちは誰もが陽気だった。
魔女と骸骨がハイタッチをして、仮面をかぶった殺人鬼はゾンビとハグをする。そんな夜だった。
萌々香は仮装していない。オフィスカジュアルに身を包み、ダークブランの髪を一つに結んでいる。平日の今日も仕事だったからいつもの通勤スタイルだ。
だが、やはり多少は浮かれていた。
明日はハロウィンだからと会社の友人に誘われ、居酒屋で食事と会話を楽しんできた帰りだった。
二十六歳にもなって彼氏ではなく同僚と飲みにいくというのが少し残念だったが、酔ってしまえばそれはささいなことに思える。
ほろ酔いの萌々香は鼻歌を歌いながら電車を降りる。
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