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「な、なんの手品だよ」  萌々香にナイフを向けているミイラ男が震えながら言う。 「手品か。それもいいな」  龍が笑った——ように見えた。  ふいに白いもやが立ち上る。  尊琉の全身がぼやけた。  かと思うと、巨大な青い龍が出現した。  満月を背に、鱗が青銀に輝く。 「こ、こいつがどうなってもいいのか!」  ミイラ男のナイフが震えながら萌々香に近付く。  龍が手を振ると、男の手がひねりあげられた。 「うああ!」  男の手からナイフが落ちる。 「萌々香、こちらへ」  龍が言う。  萌々香はふらふらと立ち上がり龍のもとへと歩いた。ミイラ男はもう萌々香を捕まえようとはしなかった。  空中を走ろうともがく男がすーっとこちらへ移動して——移動させられてきた。  ミイラ男の横にどさっとおちる。  車が宙に浮いた。
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